取得条項付株式について
会社法第2条第19号により、株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件として当該株式を取得することができる旨の定めを設けている場合における当該株式をいいます。
取得条項付株式とは、株式会社が、発行する株式の全部または一部について、一定の条件の場合に、その株式を取得することができる定めのある株式となります。
この取得条項付株式の最大の特徴は、一定の条件が整った場合において、株式会社は、株主の同意なしに、その発行済み株式を取得できる点にあります。その為、発行済み株式を取得条項付株式とするためには、会社法上厳格な手続きが要求されており、その定款変更のために株主全員の同意が必要とされています。
(会社法110条)
なお、発行済みの種類株式を取得条項付株式とするためには、通常の定款変更手続き+当該種類株主全員の同意が必要です。会社法111条1項))
・関連する法律条文
会社法
(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)
第二編 株式会社
第二章 株式
第一節 総則(第百四条―第百二十条)
第百十条 (定款の変更の手続の特則)
定款を変更してその発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第三号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとする場合(株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、株主全員の同意を得なければならない。
第百十一条
種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式の内容として第百八条第一項第六号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない。
2 種類株式発行会社がある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合には、当該定款の変更は、次に掲げる種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
一 当該種類の株式の種類株主
二 第百八条第二項第五号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の種類株主
三 第百八条第二項第六号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の種類株主
第二編 株式会社
第二章 株式
第四節 株式会社による自己の株式の取得
第四款 全部取得条項付種類株式の取得(第百七十一条―第百七十三条の二)
第百七十一条 (全部取得条項付種類株式の取得に関する決定)
全部取得条項付種類株式(第百八条第一項第七号に掲げる事項についての定めがある種類の株式をいう。以下この款において同じ。)を発行した種類株式発行会社は、株主総会の決議によって、全部取得条項付種類株式の全部を取得することができる。この場合においては、当該株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 全部取得条項付種類株式を取得するのと引換えに金銭等を交付するときは、当該金銭等(以下この条において「取得対価」という。)についての次に掲げる事項
イ 当該取得対価が当該株式会社の株式であるときは、当該株式の種類及び種類ごとの数又はその数の算定方法
ロ 当該取得対価が当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ 当該取得対価が当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ 当該取得対価が当該株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ 当該取得対価が当該株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
二 前号に規定する場合には、全部取得条項付種類株式の株主に対する取得対価の割当てに関する事項
三 株式会社が全部取得条項付種類株式を取得する日(以下この款において「取得日」という。)
2 前項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該株式会社を除く。)の有する全部取得条項付種類株式の数に応じて取得対価を割り当てることを内容とするものでなければならない。
3 取締役は、第一項の株主総会において、全部取得条項付種類株式の全部を取得することを必要とする理由を説明しなければならない。
第百七十二条 (裁判所に対する価格の決定の申立て)
第百七十一条第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、次に掲げる株主は、取得日の二十日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、株式会社による全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定の申立てをすることができる。
一 当該株主総会に先立って当該株式会社による全部取得条項付種類株式の取得に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該取得に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
2 株式会社は、取得日の二十日前までに、全部取得条項付種類株式の株主に対し、当該全部取得条項付種類株式の全部を取得する旨を通知しなければならない。
3 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
4 株式会社は、裁判所の決定した価格に対する取得日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。
5 株式会社は、全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該株式会社がその公正な価格と認める額を支払うことができる。